CCCが上場廃止を選んだ理由を考えてみた。(Tポイントのビジネスモデル)

理由は「買収対策」?

僕が考えた理由は「買収対策」です。
その根拠は「Tポイント事業」に有ります。直近の決算短信からセグメント別売上利益を抜き出すとこうなります。
アライアンス・コンサルティング事業 売上 5,158百万 利益 1,601百万
インターネット事業        売上 10,386百万 利益 737百万
TSUTAYA直営事業         売上 23,403百万 利益 △207百万
TSUTAYAFC事業          売上 43,044百万 利益 6,879百万
アライアンス・コンサルティング事業とは、Tポイント事業のこと。
Tポイントのビジネスモデルを説明すると、簡単にいえば「100円を101円で売る」ビジネスです。エネオスで4,000円分給油するとTポイントが20ポイント付きます。そして、この20ポイントをエネオスは約20.2円でCCCから仕入れています。20.2円のうち20円はポイントとして消費されるので、CCCは0.2円儲かります。これが最も基本的な収益構造。
Tポイントは貰うだけじゃなく、使う店もありますが、アライアンス先は、貯めることだけができる店のほうが多いのです。
なので、Tポイントは「ポイント引当金」ではなく、「ポイント預かり現金」としてバランスシートの左側に計上されます。

「なぜ、ポイントが『預かり現金』になるのか」

もうちょっと詳しく説明しましょう。
普通、ヨドバシカメラビックカメラなどの企業がポイントを発行すると、それは将来的に利用される前提なので、顧客に対する負債ということになります。6ヶ月以上の前払い証憑として、一定のルールのもとに引当や保全をする必要があります。割引原資としてキープしないといけません。
しかし、TSUTAYAの場合、将来使われるポイントの金額よりも、すでに販売したポイントの金額のほうが多いのです。そのため、バランスシートの左側に(つまり「資産」として)「ポイント預かり現金」として記載されているのです。これがヨドバシゴールドポイントやビックカメラとは大きく異なるところです。
CCCが売ったポイントは「資産」になり、TSUTAYAで発行したポイントは顧客に対する「負債」になります。TSUTAYA以外で「貯める」お客さんのほうが多いために、「資産」ー「負債」>0となり、常に左側に余剰が出るのです。それを「ポイント預かり現金」と呼んでいるのだと思われます。
100円分のポイントを101円で売りました。この時「1円」が預り金として計上されます。そのポイントが100円で使われた場合、利益として1円が確定します。(※1)つまり、「ポイント預かり現金」とは「売上になるのを待ってるお金」になるわけです。

「なぜTポイントを子会社化しないのか」

そもそも僕がTポイントに興味を持った思ったきっかけは、こないだTSUTAYAで会員を更新したときに有ります。規約が株式会社CCCの物だったのですが、Tポイントに関する規約もそこに記載があったのです。「儲かる事業なのになぜ別会社にしないのだろう」と、素朴な疑問に思いました。
その時は「ポイント引当金を積み上げないといけないから、資本金がでかくなってしまうからかな」ぐらいにしか思っていませんでした。
しかし、実際には引当金どころか「預り金」になっているのです。益々わかりません。「ポイントは発行体のところで使われるのが一番多い」と聞きました。つまりファミリーマートで貯めたポイントも、TSUTAYAで使われる可能性が高い、ということです。
ファミリーマートで貯めた100ポイントをTSUTAYAで100円として使うと、TSUTAYAにとっては、まずファミリーマートに売る時点で101円が現金として手に入ります。次にTSUTAYAでそれを使うわけですが、そこで100円の割引の原資となり、1円が利益になる。というのが基本的なモデルです。
しかし、実際にはTSUTAYAの商品を100円を値引きした場合でも、レンタル事業のコスト(全部込みで70%程度?)が実際の支出とすると、101円で売った物に対して、70円を払うので31円が残る、という計算になるのです。
ただ、この31円のうち30円は「ほんとは儲かっていたかもしれない」金額の訳ですが、利益なのか損失なのか見方によってどうにでもなるところなのです。ところが、別会社にすると、値引きした場合にはCCCから別会社に100円をしっかり支出するので、そこで利益の額が確定してしまいます。そうするよりも、同じ会社で「なんとなーく儲かってる」状態のほうがいいのではないでしょうか。

「で、なぜ買収対策なのか」

上記の「ポイント預かり現金」ですが、直近の資料ではこれは21億円有ります。これは「預かり現金」となっていますが、実際には売上になるのを待っているだけのただの現金です。誰かに返す必要があるお金ではありません。なので、運用でもしてればいいお金なのです。Tポイントカードがさらにいまよりも規模が大きくなるとCCCの運転資金すら賄えてしまうぐらいの金額です。
もちろん、増田氏が大量保有している会社なので全部買うなんて到底無理です。でも、キャッシュが増えれば増えるほど、ある程度の株主になって「会社の金を寝かせるな。自社株買いをしろ」という株主に狙われる可能性があります。それよりなにより、CCCの増田氏自身が、「自分が運用したほうが増やせる」と思うのが当たり前でしょう。
それが今回のMBOの背景なのではないかなと想像しています。
#僕は専門家ではないので、間違ってるところがあると思います。ぜひどなたでもご指摘下さい。修正します。

追記:上記だと、「アライアンス・コンサルテイング事業」の高利益率の説明がいまいち付きません。預り金の計上タイミングが違うかも。あと、「アライアンス・コンサルティング事業」にはポイント関連のシステムの売上と利益も計上されてるはずです。
※1 やっぱり「預り金」のロジックが気になったので修正しました。「1円を計上」と言ってますが、実際には退蔵分なども考えて、もうちょっと多い額が預り金になるはずです。