アニメ「REDLINE」見てきた

rick082010-10-10

 映画で人を「びっくりさせる」手法はかつて数々考えられてきました。古くはヒッチコックがシャワーカーテンに血しぶきが飛び散ることで残忍な場面を表現したり、ウォルト・ディズニーが絵を動かしたり、スターウォーズでは「ワープ」が表現されたり音響面では前後左右にバランスを動かして立体感を与えたり。他にも劇場に物理的な仕掛けをして、椅子が動いたり、水が飛び出したり、香りが漂ったり、というびっくりも有りました。

 でも、考えられるものは大体やりつくされていて、近年はついに「飛び出す」ぐらいでしか驚きを与えられなくなりました。

 その3D全盛期の時代に「限界を超えろ」をテーマに、「アニメ表現の限界を突破し、二度と作れない究極のアニメーションが誕生!」「体感型アニメーション」というのが本作の売りです。

 そんなこと言って煽っておいて、実際には大したこと無いんだろう?と、実はあまり期待せずに見に行きました。

 で、観終わった感想としては、すごいです。面白いし、こんなに絵が動くアニメはちょっとなかなかありえません。原画10万枚は伊達じゃないです。作り手側の気迫を感じます。椅子は動きませんが、何かを「体感」している感じがします。

 一方、木村さんと浅野さんは、本来の良さがあんまり出てなかったですねえ。下手というわけじゃないんですが、どうしても声と一緒に本人の顔がかぶってしまうので、吹き替え版みたいになってしまってるのです。JPの本当の声は英語か何かで、木村拓哉さんが日本語版を当ててる感じ

 それに引き換え、蒼井さんはやはり天才でした。ちょっとガキっぽい女の子のキャラクターですが、蒼井さんの声が乗っかるとなんともいえない色気を発します。

 ストーリーは、背景の説明とかを抑制して分かりやすさに徹しています。ちょっと盛り上げすぎて、最後までテンション上げ続けられるのか不安でしたが、ちゃんと最後までやりきってます。

 肝心の「体感型」の表現ですが、あー、なるほどー。って感じ。ギュンギュン伸びます。これはぜひ映画館で見てもらいたい感じです。家のテレビじゃ良さがわからんかなあと。

 思うに「体感型」と言われても、椅子がブルブルするわけでもないので、それで集客に役立つコピーだと思わないのです。どっちかというと、これは映画を見た人が感想を聞かれたときに一言で言わせるためにつけたコピーなんじゃないかな、と思いました。「ぎゅゅゅゅゅゅゅゅゅんっていう感じだったよ」というより「体感型って感じだね」と言わせたほうが、劇場に行かないと駄目だ、思わせるんじゃないかと。まあでも、ほんとにそうです。

 宣伝文句には、監督・小池健さん、脚本・石井克人さんが話題の、ともありましたが、知らなくても全然恥ずかしがるようなことではないと思います。はい。結構いろんな仕事をされているのですごい人達だと思うんですが、ちょっと持ち上げすぎじゃね?とも思います。こういうのって逆に引きますよね。正直。名前だけで数十万人呼べる人ならともかく、スタッフの名前なんて「知ってる人は知っている」でいいんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。